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Bizteria経営企画 Vol.14
【連載】「ストーリーテリング」で人を動かす(第3回)
株式会社イニシア・コンサルティング 代表取締役副社長 井口 嘉則

 今回は、ストーリーテリングが効果的なシチュエーションのうち、「価値観を伝える」ということについて考えてみたい。
「価値観を伝える」には、過去の優れた経営者の判断や行動を引き合いに出すのが効果的である。例えば、本田技研では、本田宗一郎さんの様々な武勇伝を語り伝える中でホンダが大切にする価値観・DNAを伝承している。宗一郎さんのエピソードに次のような話がある。

 ホンダがまだバイクメーカーだった1954年、宗一郎さんは、当時英国のマン島で行われていた世界最高峰のレースに出場することを宣言した。ホンダがまだようやく量販バイクを売り始めたころで、当時のホンダには、まだそうしたレースに出場する実力がまったくない時代だった。宣言したからにはと、宗一郎さん、そのレースを見に行って、実物を見て驚いた。とても当時の本田の技術では勝てる代物ではなかったのだ。「とんでもないことを宣言してしまった。」と、一瞬ひるんだ宗一郎さんだったが、すぐに負けん気が頭をもたげてきて、その海外出張の帰りに、ヨーロッパの優秀なバイク部品を買い集めて帰ってきたそうだ。帰国後、宗一郎さんはすぐに、これまでの開発体制ではとてもマン島のレースに出られるバイクは作れないと考え、技術研究所を別に設立したという。これが現在も続く後の株式会社本田技術研究所の出発点である。カーメーカとしては珍しく現在でも開発部隊が別会社になっている。この技術研究所が中心になって、レースに出られるエンジンを開発し、5年後には実際にレース出場を果たし、そのまた2年後には、みごと優勝を収めている。これをきっかけにしてホンダは世界一のバイクメーカーになっていったのである・・・(続きを読む)

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