前回帝人のブランドステートメントをテーマにして紹介した虎の門病院の「ビジョン・ストーリー」は、読者に明瞭なイメージを伝えることができたと思うが、その特徴を振り返りながら整理してみると以下の5つに集約される(別表参照)。
1つ目は、「具体性」ということである。虎ノ門病院の話の中で主人公の加藤課長が「本当ですか!」と驚く場面や、家族に雄弁に自社の製品を自慢する場面など、ストーリーを読んで感じて頂いたように、ビジョン・ストーリーは、その場面のイメージが明瞭に伝わる。そして、あたかもその場に居合わせたような臨場感すら感じる。それに対して、ホームページに掲載されているような概念的な説明表現は、読者に具体的なイメージを与えることができない。よく中期計画等で新しく経営ビジョンを打ち出しても、社内から思ったような反応は得られず、「分かりにくい」とか、「イメージがわきにくい」というように言われる原因は、実は概念的な説明に終始しているからである。
2つ目は、「記憶・印象に残る」ということであるが、この連載の第6回を読んで頂いた方は、「虎の門病院の話」と言われただけであのストーリーが思い出されるはずである。物語が長期記憶に効果的なことは昔からよく知られており、例えば、みなさんが子供のころ絵本で読み聞かせられた「桃太郎」や「浦島太郎」等のお伽話は、今でも思い出せるだろう。桃太郎であれば、大きな桃から生まれる場面や・・・(続きを読む) |