地球温暖化問題は世界レベルでの対応が必要な緊急課題ですが、現在行われている対策で十分かと言うとそうではありません。確かに京都議定書では参加国に温室効果ガス(GHG)の数値目標を割り当て、排出量の削減に向けて世界レベルでの取組が進められていますが、実はこれだけでは地球温暖化問題は解決しないのです。現行程度の対策では、100 年後にはGHG の大気中濃度は、危険水域であるバックグラウンドの3 倍を超えてしまいます。気候の安定化には、現在の半分までGHG 排出量を削減する必要があります。そのためには、環境負荷を劇的に逓減させる技術革新が求められています。
地球温暖化問題の解決に向けて具体的に何が必要になるかを説明する前に、私の専門である環境経済学について説明したいと思います。環境経済学は経済学の一応用分野ですが、2つの特徴的な研究課題があります。まず一つ目は環境の価値を評価することです。それによって政府や企業が便益や収益の計算を行う際に、環境を取り込むことが可能となります。
2 つ目は長期的な問題を考えるための理論枠組み作りです。従来経済学では、環境問題のように100 年や200 年の長期のスパンの問題を、扱ってきませんでした。このことは政府や実業界に・・・
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